検定のCBT(Computer Based Testing)運用の将来性
1.検定試験におけるCBT(Computer Based Testing)の活用
皆さんは、コンピュータで受験できる資格・検定試験があることをご存じだろうか。たとえば、「証券外務員」のような国家資格でも、テスティングセンターのパソコン試験で毎日のように受験することが可能となっている。検定試験の中にも、「MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)」のように、こういったCBT(コンピュータを用いたテスト手法)を活用している例もある。
こういったシステムを構築し、サービスを提供しているIT系の企業などは、2011年あたりから検定事業者に対して売り込みをかけ始めている。そして、実際にCBTを取り入れて、大きく受験者数を伸ばし始めている検定事業者も中にはある。
2.検定事業者がCBTを利用するメリット
検定事業者がこのようにCBTを活用しはじめている理由としては、大きく3つの点があげられる。
第一に、受験がいつでも可能である点を利用すれば、多様な受験生を漏らさず獲得していくことが可能である点があげられる。受験生は学習を始める動機がそれぞれ異なるが、「やろう」と思ったときには本試験日までの期日が切迫しすぎていたり、逆に半年以上あいていたりなどの理由で、本人が学習意欲を喪失したり、また「あとでやればいいや」と思ってそのままになってしまうケースが少なくない。いつでも受験ができるため、受験生のニーズにタイムリーに応えられるというのは、CBTの大きなメリットの一つである。
第二に、試験を実施する際の印刷費・当日の人件費・会場費などの節約が可能である点があげられる。全国規模で実施する検定試験については、試験会場費の負担はとても大きく、これを抑えることが継続的に試験を実施していく上で不可欠である。そうはいっても、受験生1万人以下の試験では、受験料収入の大きな増大が期待できない場合も少なくない。CBTの場合には、テスティングセンターへの委託料やシステムの利用料は必要であるものの、特に1年あたりの受験生が1,000人以下の試験においては大幅な経費節約につながる可能性が高い。インターネット上で行われる検定試験では、この会場委託費すら必要ないことになるので都合がよい。
第三に、試験問題などを柔軟に作成することができ(法改正などによる変更なども容易である)、またテスト結果を今後の試験問題作成に生かすことができる点があげられる。どのような問題で正答率が低いのかといったデータは、今後の受験教育や出版物などに生かせるだけではなく、POSシステムのように業界団体へフィードバックすることもできる場合があるというのもメリットであろう。
3.CBT試験の将来性と課題
上記以外にも、パソコンで試験を実施するメリットは多数あり、現に米国などでは公認会計士試験や税理士試験などの大型国家資格試験はもちろん、世界的に受験生のいるTOEFL試験においても、世界各地で随時パソコン受験することが可能となっている。また、日本でも学生の就職筆記試験をテスティングセンターやWEB試験で実施することも一般的になりつつあり、企業への浸透も進みつつある。IT技術は日々進展しており、記述式の試験や面接試験などもテスティングセンターでデータを取った上で、後日検定事業者のほうで採点するということもそのうち始まるであろう。そうなれば、あらゆる試験がパソコンで行われることが可能になるといえよう。
ただし、課題もまだまだある。本人確認を行っているテスティングセンター型のものはともかく、インターネット受験だと試験そのものの信頼性にもつながりかねない(替え玉受験だって十分に可能)。また、近隣に試験会場がないような地方都市との格差解消をどのように進めていくかも課題であろう。こういった点をどのように担保していくのかは、今後の課題といえる。
また、CBT試験を行っている検定事業者は、検定の運営方法に対する社会からの信頼の確保に努めるべきであろう。ペーパーテストの場合との比較を通して、本人の実力評価に対するCBT試験の妥当性を、検証可能な形で、試験合格者を評価する人たちに対して行っていく必要があるであろう。
1972年生まれ。東京大学卒。株式会社クイック教育システムズ代表取締役。文部科学省「検定試験の在り方に関する有識者会議」委員。自身でこれまでに合格してきた資格・検定試験が500種類。受験生、企業に対し、資格・検定取得のメリットを説きつつ、資格による人物評価の妥当性検証と、資格・検定試験の普及活動を行っている。
著書に『すごい検定258』(テクスト)、『60日で取れるとっておき資格』(洋泉社)ほか。
公式サイト 「資格王」中村一樹の合格の扉ブログ









