プロフェッショナルの条件
(10)プロフェッショナルの条件
ある航空会社でジャンボジェットの副機長を務めているパイロットを取材したことがあります。彼は機長になるための猛勉強に取り組んでいたので、冗談半分で「今の航空機はコンピュータ任せでも飛ぶじゃないですか」と言ってみました。オートパイロットはもちろん、離着陸にしても誘導信号がありますからね。
それに航空パニック映画では、素人が管制塔の指示に従って操縦して無事着陸なんていうストーリーがあったじゃないですか。
彼は、確かにそうした側面はあると言いました。だったら、何をそんなに勉強しているのかと重ねて訊ねると、飛行中の故障やトラブルへの対処方法だというのです。飛行機は高度で複雑な機械ですから、天候などの自然条件も含めて、あらゆるアクシデントが考えられます。そうはならないように安全点検や整備が行われるのですが、人間がすることですから100%完全とは誰も言えません。
飛行中に何か故障やトラブルが発生しても、それに適切に対処して乗客の安全を守ることが機長の本来的な役割であり、それこそがプロフェッショナルなパイロットに求められる必要条件だったのです。キャビン・アテンダント(当時はスチュワーデス)第一号の雇用条件が看護師だったことも、それで納得できました。
このことは、パイロットに限らず、どんな職種のプロフェッショナルにも共通した要件といえるでしょう。つまり、平時ではなく、非常時にこそプロの力量が発揮されるわけです。とすれば、福島原発事故直後はどうだったか、なんてことは今さら言いませんけどね。
そんなわけで今回は、資格や検定を通して、プロフェッショナルを目指すことを考えてみましょう。
●資格や検定で問われる3つの要件
改善や工夫を意識して仕事したり、優秀な人の下に付くなど、プロになるには様々な方法が考えられますが、専門的な資格や検定の合格を目指した勉強ももちろん有効です。ただし、それを取得してもプロとしてのスタートに過ぎないことは意識しておくべきでしょう。
難関といわれる司法試験でも、合格後に1年間の司法研修を行い、さらに弁護士事務所で経験を積んでやっと一人前と見なされるくらいですから、試験の合格がゴールではないのです。
しかし、これだけではあまりにも漠然とした話ですよね。そこで逆に、資格や検定の試験で判定されるプロとしての要件を、ボクなりに考えた範囲で、ごく大雑把にまとめてみました。
1)知識
2)理論
3)スキル
まず、1)知識は、それを知っているか知らないかというレベルの専門的な知識です。
次に、2)理論。これはちょっと難しくなりますが、公式みたいなもので、それを応用すると、問題や課題を客観的に分析でき、一定の結論を導き出せるような手法といいかえてもいいでしょう。
最後に、3)スキル。これは現場で使える実践的な技能となります。どんな職場でも、事務職にしても必ずあるはずです。過激なクレーマーでも思わず納得する話し方など、現代は特に対人的なソフト・スキルが求められていると思います。
これらは決してバラバラなものではなく、相互に関連しているのですが、この3つを十分に過不足なく備えており、かつ職務経験と、前述した非常時に対応できる知恵のある人がプロだとボクは考えています。
ただし、残念ながら資格や検定の試験で判定できることには限度があります。ペーパー試験に最も馴染みやすいのは知識であり、理論となると出題に工夫が必要となります。スキルについては実技が不可欠ですが、頭の中で働かせるスキルもあるので、ペーパー試験でも出題は可能です。
しかしながら、現実的に試験で問われることの多くは知識であり、理論についても「知っているか知らないか」程度で、その応用力を十分に判定できる資格試験や検定試験は限られているとボクは思います。
ということは、資格や検定を通してプロを目指す場合は、その試験がこの3つの何を重点にしているのか、出題内容はどの程度のレベルなのかを意識することが必要です。そして、試験で十分にカバーされていない部分を、合格後に実務を通して意識して高めていけばいいのです。
そのためには明確な目標や評価基準が必要になるので、こうした「ポートフォリオ」を意識しているのといないのでは、その後のステップや仕事のやり方まで変わってくるわけですね。
これはあくまで私見ですけど、日本の社会は長く経験と知識とスキルを重視してきたように思います。これからは、応用が効いて、他人にも説得力のある「理論」を身につけることが重要ではないかとボクは考えているのですが、いかがでしょうか。
1954年生まれ。雑誌記者・編集者を経て、’87年に編集プロダクションとして有限会社チーム・スパイラルを設立。国内外の資格だけでなく、社会人の大学・大学院入学、インターネット遠隔学習、MBAなどの取材、執筆を行う。『キャリア・チャレンジ2009-2010』(日本経済新聞出版社)、『資格試験合格後の本』(自由国民社)、『価値ある資格厳選200』『資格の達人』『MBA入学ガイドブック』『日本で学べるアメリカ大学遠隔学習プログラム』(ダイヤモンド社)ほか、著書多数。
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