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女性の生き方と資格

(2)女性の生き方と資格

「実務経験をキャリアとして積み重ねられる仕事をしたかったのです」
 大学時代にそう考えて、彼女は2年次からCPA(米国公認会計士)に挑戦することにしました。残念ながら在学中は2科目のみ合格。ただし、その努力を評価されてか、卒業後は大手銀行に採用されて投資部門に配属。そこで働きながら4科目すべてに合格して有資格者となりました。
 彼女はしばらくして銀行を退職して大手国際監査法人に入社。「今は念願のニューヨークにいて監査法人で働いています」という元気なメールをいただいたことがあります。

 誰でも彼女と同じようになれるわけではないにしても、女性の生き方は昔に比べて多彩になってきました。結婚して専業主婦はもちろん、キャリアウーマンとしてビジネス界で活躍したり、政治家を志すこともできます。また、未婚あるいは離婚して一人で子育てというケースもあるでしょう。高収入なら、ご亭主のほうが「専業主夫」になるのも珍しくなくなりました。
 ボクが女性なら、楽チンに見える専業主婦になりたいですけど、夫が失職したり、不慮の事故で亡くなると、社会復帰は簡単ではありません。仕事に生きることを志望していても、結婚・出産・子育てはキャリアのブレーキになりがちです。もちろん産休・育休が充実している会社もありますが、まだまだ一部の大企業だけでしょう。

 そう考えていくと、女性の生き方が多彩になった反面で、それなりにリスクはあるわけです。それを見越して、前述の彼女はCPAを選んだということになります。高度な専門職なら、代替できる人材が限られてくるので、職場復帰も比較的に容易になるわけです。看護師を始めとする医療系専門職、保育士、介護福祉士など福祉系の資格も同じことが言えます。

 では、専業主婦希望で念願が叶ったのに、突然に夫のリストラや給与カット、離婚や死別という事態はどうでしょうか。自立して収入を得なければなりませんが、長く家庭にいればいるほど、再び社会に出て働くことに怖れを抱くようになります。まず自分に「やれるんだ」と言い聞かせないとダメなので、たとえば簡単なパソコン系の検定に合格する。それだけで自信がつくほか、履歴書の上でも最低限の事務はできる証明になります。少なくとも専業主婦歴だけの人に比べれば、有利になることは確かでしょう。
 語学が好きなら、英検やTOEIC®で上位の級やスコアを取る。これも自信となって、それなりの仕事を目指せるほか、通訳案内士ならフリーランスとして働けます。今は原発事故で外国人観光客が大幅減少なので時期は悪く、報酬も決して高いとはいえませんが、この資格は子育てや主婦経験を活かせる「一生仕事」という強みがあります。観光客には子連れ夫婦やご老人もいますからね。

 短期でとにかく仕事が欲しいのであれば、ホームヘルパーが妥当かもしれません。130時間程度の講習で2級を取得でき、関連団体に登録すれば仕事を紹介してくれます。内容(家事援助か身体介護か)にもよりますが、東京では時給1000円~1500円程度といわれています。
 ところが、大物国家資格といわれる行政書士や司法書士などは、取得までに時間がかかるほか、独立して成功するのもなかなか難しくなってきました。若い頃に専門職を目指すなら別ですけど、即応性には乏しいわけです。

●自分にとっての「現実性」を意識する

 つまり、前回も指摘したように、資格や検定は生き方やバックグラウンドによって選び方が変わってくるのです。そこのところをしっかり見極めないと、自己満足だけの「習い事」になりかねません。
 この場合のキーワードは、その資格や検定における、自分にとっての「現実性」です。若い人であれば、勝間和代さんのように自立した生き方を目指して、公認会計士や、法曹界を目指すということもあり得ます。面倒な勉強は嫌いだけど、とにかく手に職をつけたいというなら、建設機械つまりショベルローダーなどの運転免許も女性なら希少価値があるでしょう。
 ボクは現代社会で女性が無理な仕事なんてほとんどないと思っています。ただし、自分にとって「現実性」のない資格や検定をいくら目指しても仕方ありません。あなたがその資格や検定を取得しても、本当に仕事が得られるのでしょうか。実際にどれくらいの収入が得られて、どんな将来像が描けるのでしょうか。

 こうした「現実性」は、試験勉強にも、転職時の姿勢にもかかわってきます。冒頭で紹介したCPAの女性も、決して楽に合格したわけではありません。彼女は英文科でしたから、会計どころか会社の仕組みも知りませんでした。だからこそ大学在学中は2科目しか合格できなかったのです。
 しかし、銀行在職中に全科目を合格すると果敢に退職してしまいました。せっかく大手銀行の正社員になれたのですから、普通は辞めないですよね。けれども彼女は自分の信念を貫こうとしたのです。それからどうしたと思いますか?
 普通なら、ネットや新聞、求人誌、ハローワークなどで仕事を探します。けれども、彼女は複数の国際監査法人に自分から直接に電話して、採用を検討してもらえるように願い出たのです。

 勝間さんのようなスーパーウーマンでも、こうした努力や苦労は必ず経験しているはずです。結果として華やかに活躍しているように見えても、秘かに泣いた経験や男性社会に翻弄された時期がないはずがありません。
 だから、表面上の華やかな部分だけをいくら真似たり追いかけても、絶対に追いつくことはできないのです。本当に見なければいけないのは、陰の部分、つまり挫折や、それをハネ返す努力ということです。それと同じように、楽に取れて高収入が得られる美味しい資格もありません。

 そうした現実的な覚悟を持って、必死で努力することを厭わないのであれば、取れない資格や検定なんてないはずだとボクは思うのです。
 

1954年生まれ。雑誌記者・編集者を経て、’87年に編集プロダクションとして有限会社チーム・スパイラルを設立。国内外の資格だけでなく、社会人の大学・大学院入学、インターネット遠隔学習、MBAなどの取材、執筆を行う。『キャリア・チャレンジ2009-2010』(日本経済新聞出版社)、『資格試験合格後の本』(自由国民社)、『価値ある資格厳選200』『資格の達人』『MBA入学ガイドブック』『日本で学べるアメリカ大学遠隔学習プログラム』(ダイヤモンド社)ほか、著書多数。

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